保険の基礎知識
2023.05.22
所得補償保険とはどのような保険?収入保障保険や就業不能保険との違いは?【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。
所得補償保険は、病気やケガなどが原因で働けない時に備える損害保険のひとつです。似た性質を持った保険には、収入保障保険や就業不能保険がありますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、所得補償保険の基本的な内容の紹介に加え、収入保障保険や就業不能保険との違いも解説します。また、所得補償保険がどのような人におすすめかも解説しますので、保険を選ぶ際の参考にしてください。
所得補償保険とは
所得補償保険とは、病気やケガなどが原因で働けなくなった際の収入減を補う、損害保険の一種です。ここでは、所得補償保険の概要を解説します。
保険金が受け取れる条件
所得補償保険では、病気やケガが原因で働けない状態(就業不能状態)となった場合に、保険金が支払われます。就業不能状態には、入院だけでなく、自宅療養していることも含みます。ただし、病気やケガが原因であっても、死亡した場合には、保険金は払われません。詳しい保険金が受け取れる条件は、保険会社に確認しましょう。
また、保険会社が定める就業不能状態に該当しても、免責期間と呼ばれる所定の期間が過ぎるまでは、保険金の支払いはありません。一方、保険金の支払いが始まると、補償期間が終了するか、就業不能状態が解消されるまで継続して受け取れます。
補償期間
所得補償保険の補償期間は、短期間のタイプと長期間のタイプに分かれます。この2つは補償期間の長さのほかに、保険金を受け取れない期間である免責期間の日数や、保険料などが異なります。
短期補償タイプ
所得補償保険では、補償期間は1年〜2年程度が一般的です。その分、免責期間は約7日間ほどと短く、長期補償タイプと比較して毎月の保険料は安いという特徴があります。補償期間が終わると更新が可能ですが、その場合は保険料が値上がりする可能性がある点には注意しましょう。
長期補償タイプ
長期補償タイプでは、60歳や65歳になるまでなど、補償期間が長いのが特徴です。その代わり、免責期間が60日以上と長く、短期補償タイプと比較すると保険料が高い傾向があります。
また、保険を解約しない限り補償が続き、更新の必要はありません。そのため、加入後は保険料が一定なのも特徴です。
働けない状態でも保障されないケース
基本的に、所得補償保険では病気やケガなどで働けなくなった際に保険金を受け取れます。しかし、以下の例のように、一部のケースは補償の範囲外です。
- うつ病などの精神疾患
- 妊娠や出産
- 自傷行為や危険運転
- 自然災害によるケガ
商品によっては、特約で保障の範囲を拡大させられるものがあります。その場合は、特約を付加することでうつ病や妊娠・出産などによる就業不能状態でも保険金が受け取れるようになりますが、保険料は高くなります。補償範囲と保険料のバランスを見ながら、特約の必要性を判断しましょう。
収入保障保険や就業不能保険との違い
所得補償保険によく似た保険に、収入保障保険や就業不能保険があります。ここでは、それぞれの保険の違いを解説します。
収入保障保険との違い
所得補償保険と収入保障保険の最も大きな違いは、所得補償保険では死亡時には保険金が受け取れないのに対し、収入保障保険は万が一の死亡の際に、のこされた家族が保険金を受け取れることです。つまり、収入保障保険は死亡保険のひとつであり、被保険者にもしものことがあった際に、のこされた家族の生活を守るための保険であるという点が、所得補償保険とは異なります。
就業不能保険との違い
所得補償保険と同様に、被保険者の収入減に備える保険として、就業不能保険があります。
就業不能保険でも、被保険者が病気やケガで働けなくなった際に給付金が支払われます。そのため、所得補償保険と就業不能保険は非常に近い性質を持った保険だといえますが、この2つは販売している保険会社が異なります。
所得補償保険は損害保険会社が販売する保険ですが、就業不能保険は生命保険会社が販売する保険です。また、所得補償保険には1年や5年など、保険期間が比較的短期間のものが多く、更新のたびに保険料が上がるという特徴があります。それに対して、就業不能保険は6歳や65歳になるまでなど、保険期間が長いのが特徴です。更新がないため、保険期間が終了するまで保険料は変わりません。
所得補償保険がおすすめな人
所得補償保険は、病気やケガによる収入減少に備える保険です。所得補償保険の必要性は、職業や家族、一人ひとりの経済状況などによって異なります。ここでは、所得補償保険がどのような人におすすめで、どのような場合に必要性が高くないといえるかを解説します。
自営業やフリーランスの人におすすめ
自営業やフリーランスの人は、働けなくなるとすぐに収入が減ってしまうおそれがあるため、所得補償保険の必要性は高いといえます。自営業やフリーランスには有給休暇や労働災害補償保険(労災保険)の制度がないうえに、多くの人が加入している国民健康保険には、傷病手当金の制度もありません。つまり、自営業やフリーランスの人の場合は、病気やケガを原因とする休業による収入減少に対して、公的保障が手薄なのです。そのため、所得補償保険などの保険を利用して、もしもの時に備えておくのがおすすめです。
会社員・公務員などは公的保障が手厚い
会社員や公務員の場合は、自営業やフリーランスに比べると病気やケガなどで働けない期間に対する公的保障が充実しています。たとえば、短期間の休職には有給休暇、ある程度長い期間にわたって仕事を休む場合は、加入している健康保険から傷病手当金を受給できます。
そのため、病気やケガによる収入減少に対する公的保障がある会社員や公務員の場合は、所得補償保険の必要性はかならずしも高くありません。ただし、傷病手当金を受給できる期間は最大1年6カ月、金額は過去12カ月間の平均収入の約3分の2です。会社員や公務員でも、小さな子どもがいる場合など、傷病手当金だけでは保障が不足すると考える場合は所得補償保険などの加入を検討しましょう。
まとめ
所得補償保険は病気やケガなどで働けない時の収入減に備えるための保険です。収入保障保険や就業不能保険と似ていますが、のこされた家族ではなく、被保険者本人の生活を守る保険であることや損害保険会社が販売しており、保険期間が短いという特徴があります。
所得補償保険は、公的保障が手厚くない自営業やフリーランスの人におすすめの保険です。会社員や公務員の場合も、公的保障にさらに保障を上乗せしたい人は加入を検討してみましょう。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
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