お金と暮らしの基礎知識
2024.01.22
扶養内じゃ物足りないけどパートでいたい!扶養外パートのメリット【FP監修】
株式会社FP-MYS 代表取締役 工藤 崇
ファイナンシャルプランニング技能検定2級・証券外務員二種。レタプラ開発・提供。YMYL領域の執筆多数。相続・保険・資産運用などの個人相談。IFA事業展開予定。ライフプラン・シニア関連の開発案件受任。
パートで働く際に「扶養内で働く」ことを意識する人は多いでしょう。実際、パート収入を抑えて配偶者の扶養に入れば社会保険料や税金の面でのメリットは少なくありません。しかし、扶養に入れる年収には上限があるため、もっと働きたいと考える人もいるでしょう。
そこで、この記事では扶養を外れることによる影響や、扶養を外れてパートとして働くメリットを詳しく解説します。扶養内でパートとして働いているけれど、いまの収入では物足りないと感じている人はぜひお読みください。
扶養を外れるとどうなる?
「扶養内で働く」という時、配偶者控除を受けられ、本人も所得税や住民税が非課税になる年収103万円(自治体によっては98万円)以下で働く場合と、社会保険上の扶養となる年収130万円以下で働く場合の2つのケースがあります。
扶養を外れるということは、年収の上限を気にせず働くということであり、働く時間や職種の選択肢が広がります。一方、お金の面では税金や社会保険料を払うようになり本人の手取り額が減ったり、所得控除が使えなくなることで配偶者の税金が増えたりといった影響があることを押さえておきましょう。
社会保険料の支払いが発生する
年収が130万円を超えると、会社員などの配偶者(ここでは夫とします)の社会保険に入り続けられないため、勤務先の社会保険や国民健康保険などに入ります。夫の扶養内であれば社会保険料はかからないため、社会保険料の負担で手取り額が減ってしまうのを避けたい人は、年収が扶養に入れる範囲を超えないように調整が必要です。従業員が501名以上いる企業で働いている場合は、年収106万円(月額賃金8.8万円)以上から社会保険への加入義務が発生することもあるため、特に注意しましょう。
ただし、社会保険に加入することにはメリットもあります。詳しくは記事の後半の解説をご覧ください。
配偶者控除などが利用できなくなる
たとえば、妻の年収が100万円の場合、配偶者である夫は自分の所得から38万円を控除できます。これを配偶者控除といい、所得税や住民税を少なくできる制度です。しかし、この場合、配偶者控除・配偶者特別控除が利用できるのは妻の年収が201万円6千円以内の時に限られます。なお、妻の年収150万円までは満額の38万円が夫の所得から控除できますが、年収150万円を超えると控除額は段階的に少なくなります。
また、妻(夫)の年収が一定額以下の場合に、配偶者手当がもらえる会社もあります。自分のパート収入が増えることによって配偶者控除が使えなくなったり、手当がもらえなくなったりすることで配偶者(夫または妻)の手取り額が減ってしまうため、扶養を外れるのは損だと感じる人も少なくないでしょう。
働く時間が増える
多くの場合、扶養から外れるほど働くということは、かならずしもフルタイムとは限らないものの労働時間が増えることを意味します。労働時間が長くなれば、家事や育児、プライベートの時間は減ってしまいます。家族に協力してもらったり、便利な家電を利用したりすることで乗り越えましょう。
扶養外パートのメリット
扶養内で働けば社会保険料や配偶者の税金面を減らせるのがメリットですが、大きく収入を増やせないというデメリットもあります。一方、パートでもあえて扶養を外れるほど働くことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つのメリットを解説します。
年収154万円以上稼ぐと収入が増えていく
前の項目にて扶養を外れると手取りが減ってしまう可能性を紹介しましたが、それでも一定以上の水準を超えて働くと、働いた分だけ収入は増えるようになります。もし、扶養外パートで働くのであれば、年収154万円以上を目指しましょう。なぜなら、扶養を外れることによる手取り額減少と、収入が増えることによる手取り額アップが逆転するのが年収154万円だといわれているためです。
年収130万円を超えると扶養から外れ、社会保険料や所得税・住民税などをあわせて年間約24万円の負担増となります。そのため、年収130万円から153万円のゾーンは、働いても社会保険料や税金で手取り額が減ってしまい、働き損になることが多いといわれています。しかし、年収154万円以上は収入の伸びに応じて手取り額も増えていきます。働き損を回避するためにも、扶養を外れるのなら年収154万円以上を目指しましょう。
保障が手厚くなる
扶養を外れて社会保険に加入するようになると保険料の負担は増えますが、デメリットばかりではありません。厚生年金に加入すれば、加入した期間の分だけ将来の年金額が増えます。また、健康保険に入ると、病気やケガで長く仕事を休む時に傷病手当金を受け取ったり、出産・育児の際に出産手当金や育児休業給付金などを受け取れる可能性もあります。これらは扶養家族として配偶者の社会保険に入っている人にはないメリットです。
キャリアアップの可能性がある
扶養外で働くためにパートの勤務時間を長くできれば、より経験を積みやすくなるため、責任ある仕事を任されたり、正社員登用されたりといったキャリアアップにつながるかもしれません。非正規雇用であるパートの場合、正社員と比べると収入や福利厚生、キャリアアップの面で不利になるのが一般的です。しかし、パートという立場であっても長い時間働き、会社に貢献することで正社員登用されるなど、将来のキャリアアップにつながる可能性があります。いまはパートとして働いても、今後も働き続けたいと考えているのであれば、正社員になることは視野に入れておいても良いでしょう。
まとめ
配偶者の扶養に入れる範囲内に収入を抑えながら働くことには、社会保険料がかからない、配偶者の税負担が軽くなるなどのメリットがあるのは確かです。しかし、最大でも年収130万円以内に収入を抑えなければいけないため、働く時間や収入面で物足りなさを感じる人もいるのではないでしょうか。
扶養を外れて働くことには、収入を増やせる以外に将来の年金額が増えるなどのメリットもあります。また、長く働くことでキャリアアップにつながる機会を得られるかもしれません。
この記事を参考に、自分自身の未来を意識して扶養外パートで働くことを検討してみてはいかがでしょうか。
WRITER’S PROFILE
リアほMAGAZINE編集局
保険選びのリアルな情報やノウハウをシンプルに分かりやすく解説するリアほ編集局です。